犯罪による収益の移転防止に関する法律

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総論[編集 | ソースを編集]

  1. 通称、「犯収法」。
    • 一部の特殊な業界(司法書士等)では、その通称よりも「ゲートキーパー法」の方が通りがよい。
      • むろんそこでいう「ゲートキーパー」(原義は門番)は、自殺防止のための要員ではない。
  2. 犯罪による収益の移転防止がその主たる目的。
    • 色々あって、テロ資金供与防止なんかも目的に入っている。
  3. 主たる所管は警察庁。
    • なんだけど、適用される先が金融機関とか宅建業者、貴金属商等、多岐にわたることから共管省庁が割と多い。(内閣府(金融庁)、総務省、法務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)

各論[編集 | ソースを編集]

  1. 第1条では目的を書いてある。
    • この法律の目的の詰まるところは「国民生活の安全と平静を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与すること」にあるらしい。
  2. 第2条では定義が書いてある。でも、「特定事業者」と「顧客」についてのみ。特定取引とか特定業務とかもこっちに持ってきても良さそうなもんだが、色々あってそうはしていない。
    • 特定事業者に当てはまるのはざっくり言っても金融機関(保険会社・証券会社・貸金業者・資金移動業者含む)や両替商、質屋、不動産屋等に限らず、カジノ業者、私書箱屋、弁護士やら公認会計士・監査法人、税理士等、多岐にわたる。
      • いわゆる士業の人が、この法律の適用を受けるのは、彼らは特定受任行為を行うことができるから。
  3. 第3条では国家公安委員会の責務等を規定。あくまでも「~できる」規定とか「~ものとする」規定なので、実際には対応がなされていなくても罪に問われることはないが。。。。。。
    • 第3項では「犯罪収益移転危険度調査書」の作成・公表について書いてある。
      • この「調査書」、来日外国人によるマネロン犯罪事犯の検挙件数の増加状況が見られたりして、実に面白い。例えば、通帳・キャッシュカード等の不正譲渡等に関する犯収法違反事件の国籍等別の検挙件数についても書いてあるが、これによると、日本も含めた全体の8割以上がベトナム及び中国国籍の者によるものだという。
        • 中国人やベトナム人のせいで治安が悪化しているという感情を抱いている人は多いが、それが事実であることを示す良い証拠の一つであるとも言える。
  4. 第4条では、取引時確認義務について規定する。
    • 銀行の窓口等で、わかりきってるはずなのに取引目的を聞かれるのも、免許証等の身分証明書を提示させられるのも、その理由の1つは第4条第1項。
      • この第4条第1項、一旦、法の末尾につけてある別表を見に行ってから施行令・施行規則を見に行かせる仕様になっている。e-govで読むときは非常に見にくい。
        • 別表から施行令を見に行くと「特に注意を要する」取引として色々な取引形態が書いてある。
          • 代表的なものでいうと200万円超の現金の受払取引(出金)とか10万円超の現金の受払いをする為替取引(現金による振込)(施行令第7条第1号ツ)。
            • キャッシュカードの1日の出金限度額が200万円までだったりするのも、ATMでの現金振込の限度額が10万円までなのも、実はこの条文によるところだったりする。
            • 取引額が200万円を超えたらアウトなら100万円ずつ2度に分けてやったらええんやろ的な考えが思い浮かびそうだが、トータルで200万円超なら確認義務がある旨、施行令第7条第3項で明確化されてしまっている。
      • 因みに「口座開設自体は、入出金も決済も発生していないので取引には当たらないんじゃないか」と思っている人もいそうだが、残念ながら施行令第7条第1項イで、見事に「特に注意を要する」取引に含まれることとなっている。
      • 法人の場合、法人自身だけではなく、実質的支配者の確認というのも入る。実質的支配者ってのは、その法人を実質的に支配できる立場の人又は会社の事を言い、基本的に個人又は上場企業のみがこれになれる。
    • 第2項では、特定の取引パターンを列挙し、これに該当する取引で、その額が200万円を超えている場合は、資産及び収入の状況の確認等、厳格な顧客管理・取引時確認をすることを求めている。
      • 第1号イのなりすましの疑いのある取引は、イメージしやすい。だいたいなりすましている時点で、何かしらおかしなことをやろうとしているとしか考えられないからね。
      • 第1号ロは虚偽申告の疑いのある取引を示している。なので、例えば銀行口座開設時に嘘の理由や職業を言うと、後々これで引っかかってくるかもしれない。
      • 第2号では、「犯罪による収益の移転防止に関する制度の整備が十分に行われていないと認められる国又は地域」の居住者との取引等を挙げている。
        • 具体的な地域は施行令第12条第2項で明示されている。
      • 第3号ではその他必要と認められる取引的な書き方がされているが、施行令第12条第3項まで目を向けると、外国の要人やその親族との取引であることがわかる。
        • 銀行での口座開設時に、外国Pepsとかいうのに該当しないか聞かれたことはないだろうか? 実はこの確認はこの規定を受けて実施されているものだったりする。
          • どうでもいいけど、窓口で「外国の要人との関係性」みたいな質問が来たときに、「Peps該当なしっす」と答えてチェックを付ければ、少なくともその部分の説明は省かれるので2分程度は時短になる。
    • 第3項は第1項の適用除外規定。既に確認を行っている顧客との取引もこれに準ずるものとして施行令第13条に書かれている。
      • 銀行での入出金時にATMで、いちいち口座開設時と同じような確認をしないで済んでいるのは、この条文のおかげ。これがなければ、ATMであっても免許証を提示したり、取引目的や職業等を確認してもらわないかんし、銀行はその都度、確認記録を作成する必要がある。(施行令第7条第1項→施行規則第4条第1項第7号ホ)
  5. 第5条では、特定事業者の免責について規定する。
    • こう書くと、何らかの事情がある場合、確認とか届出の義務が免れるのかと思われるかもしれないが、そうではなくて取引時確認等を拒否されたら、仮に特定取引の提供義務があったとしても拒んで良いとする免責規定である。
  6. 第6条は取引時確認記録の作成と保管の義務について規定している。
    • 因みに保管は取引終了又は契約終了等から7年以上が必要。たまにある勘違いで、確認した日から7年間の保管で良いと思っているものがあるとかなんとか。
  7. 第7条は取引記録等の作成・保管義務。
    • 取引の記録を作成すること、記録は取引の行われた日から7年間は保存することが求められている。
  8. 第8条では疑わしい取引の届出の義務について規定。
    • 疑わしい取引等に当たるかどうかの判断は、特定事業者がやることになっている。
    • 届出の方法は、事業形態によって異なる。
  9. 第11条は特定事業者が取引時確認等を的確に行う等するための措置を講じる努力義務規定。
    • 努力義務規定なのに、金融庁が所管する部分については、監督指針と言われる法令でもなんでもないのになぜか事実上の強制力を伴うやつの改正時のパブコメで整備できてなければ、指摘・勧告等を行うと金融庁は明言してしまっている。法令でもないのに。
  10. 第12条では弁護士による取引時確認等の措置について規定。
    • 基本的に、具体的なところは日弁連の会則に任せるという内容。
    • 面白いのは、第4項で「政府と日本弁護士連合会は、犯罪による収益の移転防止に関し、相互に協力するものとする。」とある。
  11. 第16条では監督官庁による立入検査等を行うことができる旨、規定。
    • 第4項でちゃっかり、日銀だけは適用除外。